薬局長 あいさつ
6月末日、来年度の薬剤師募集に2名の薬学生が面接を受けてくれました。その際、今の薬学教育と将来の自分の姿について質問させて頂いたところ、学生2名からほぼ同じ答えが帰ってきました。それは、これまでの薬学教育は、調剤や製剤業務が中心のいわゆる「対物」業務がほとんどだと思われますが、これからは患者中心の医療現場で薬剤師の目線から患者モニタリングを実施する「対人」業務が主になるだろうと教育されています。そして、将来、早くそうしたコミュニケーションができる薬剤師となり、患者から信頼される業務にあたれる病院で勤務したいという内容でした。この答えは、薬剤師だけではなく全ての職種に該当するのではないでしょうか。国も医療が患者中心となるように職種間で連携して実施するチーム医療に「フィー」を設け、今後の医療の方向性を「安全」「安心」「医療費削減」の方へ示しているように感じています。よって国の方向性に重点を置いた下記に示めす業務を展開していきたいと思っています。
患者中心の医療を目指すため今後充実をさせて行かなければならない業務
Ⅰ.薬剤師の「対人」業務に点数が付いている業務
1.薬剤管理指導
2.病棟薬剤業務実施加算
3.薬剤総合評価実施加算及び薬剤調整加算
- 退院時薬剤情報連携加算
Ⅱ.「チーム医療」に係る点数
1.退院時共同指導料
2.入院時支援加算
3.せん妄ハイリスク患者ケア加算
- 連携充実加算
5Gの「BIGデータ」「高信頼」「低遅延」が医療にもたらす影響。
今年は、日本も遂に5G元年となりました。各社携帯キャリアからそれに対応した端末がボチボチ発売されています。この「5G」は、メインサーバーの高信頼性能はさることながら、クラウドサーバーにおいても今のメインサーバ並みの処理を行うことができると言います。また、ある程度の処理はクラウドサーバーで行え、処理速度も全くといっていいほど遅延がないのが特徴です。(4G端末でアプリのダウンロードの際、待ち時間がありますが、5Gではなくなります。)このメリットを使い、「車の自動運転化」や「災害時の危険な作業をする機器」の開発等に期待が持たれているのは誰でも知っていることですが、「医療」においても注目されています。将来「高信頼」「低遅延」の技術を使い、遠く離れたアメリカから日本のダビンチとつなぎ、手術を行うことができるかもしれません。また、大量データを同時に行える能力は、国で進めている「地域包括ケアシステム」構築には、欠かすことでできないもので、1病院での処方・検査・画像データ・治療法等がネットワーク上で患者情報として共有され、今後の治療や予防に利用され無駄のない医療・介護・福祉のシームレスな社会に活かされる様になると思います。
こうした社会を前提に今後の病院薬剤師は、今後下記の業務に目を向けなければと思っています。
1.病診薬連携(かかりつけ医-かかりつけ薬局-病院・診療所での情報共有)の基礎作り
2.在宅薬剤管理指導あるいは居宅薬剤管理指導の在り方の検討
3.施設間情報管理業務(トレーシングレポート・薬剤師管理サマリー)の構築
これからは、院内だけではなく院外の医療・介護スタッフとのチーム医療の連携が重要になるのではないでしょうか?薬剤師も病院―開局薬剤師の連携をつくれる協調性のある薬剤師を目指す必要があると感じています。
「AI」の進歩と病院薬剤師
最後に「AI」と薬剤師についてです。「AI」は、人工知能ということは、誰しもがわかっていることでしょう。SF映画では、「AI」とか「ロボット」が暴走して人間をなんちゃら・・・したなんてことはよくありますが、今のこの「AI」が想像を超えて医療に導入されていることを最近知りました。
2年前の研修会で驚いた「AI」についての現状
1:新薬開発に導入されていること。
➡これまで新薬開発は、開発者の記憶・経験を頼りに試行錯誤で行っていましたので、新薬開発まで10~20年の長い期間がかかっていました。しかし、「AI」を導入することにより、既存の医薬品から薬効を示す理論上の構造解析を行い、新薬の候補薬を合成し直ぐに治験を行い、医薬品として開発から10年未満で市場に現れることとなります。(医薬品メーカーの2/3が新薬開発に「AI」を導入している)
2:予防医学に「AI」が導入されている。
➡1分間に2万枚の皮膚がんの画像データを参照し比較して判断できること。そして、その正解率が99.5%。(かな~!)また、大腸がん検査においても95%だったかなくらいの精度であることでした。これは、カルチャーショックでした。臨床に、すでに導入されているということでした。しかし、学習能力は、潰されいるようです。なぜならば、症例の多い病院とそうでない病院で差が生まれることは、好ましくないという理由なようです。もし自分だったら賢い「AI」を活かした機器で検査をしてもらい、病変を一早く発見してほしいですが…。皆さんはどう思いますか?
3:「AI」薬剤師とは?
➡最後に「AI」薬剤師についてです。患者の過去及び現在の病気、処方された薬の内容そして、それに伴う副作用歴・相互作用歴等正確に記憶し直ぐ対応することは、とても至難のことです。しかし、今年度中に販売される「AI」搭載の服薬指導支援システムは、これを可能にできます。そればかりか今回処方された医薬品との相互作用・副作用発生率を予想し疑義照会の判断を行うことができる。また、服薬指導においては、患者に対する指導のポイントを的確に指示し、薬剤師の指導を支援するというものです。薬剤師の支援として販売するとの事ですが、近い将来薬剤師不足の解消・支援から、今後の薬剤師の業務改革次第ではこの「AI」薬剤師にとってかわるのではないかと危機感を感じています。
以上新病院に移転して、現状と課題そして今後の方向性について長々と書き連ねさせて頂きましたが、やはりこれからの医療は患者中心であり、各医療人の業務内容は、早く「物」から「人」にシフトしていかなければならない気がします。過去の「対物」にしがみついていては、「AI」「情報社会」の進歩のスピードに追いつかれ・追い越されてしまうかもしれません。そうならないように薬剤師として「患者」にとって何が必要で何を求められているかを判断し、薬剤師としての能力を「患者」のために注ぐ薬剤師を目指して欲しいと感じています。
スタッフ紹介&仕事風景
機器紹介
再調剤・返品業務の際、自動で錠剤を識別し払い戻しを行う機器です。
最近、保健所監査で「錠剤の再利用の規定・方法について」医薬品安全性をどの様に担保しているか等の質問を毎年受けています。この機器の導入で「方法」については、担保されたと思っています。あとは、「返品の内規(規定)」を「医薬品業務手順書」に記載することで対応可能であると思いますが、今年度の監査待ちです。(コロナ禍で来年に!)
一包化調剤された医薬品を監査する機器です。これまでは、薬剤師のみの監査でしたが、この機器のおかげで二度の監査が行えるようになり更に安全に調剤された医薬品を供給出来る様になりました。しかし、当初は、錠剤の色々な角度からの画像データがなく、エラー続きでした。最近は、手作業ですが日頃の画像データ更新の甲斐もあり、エラーが少なくなり、精度は上がっています。永遠にマスター更新が必要なのは、大変です。
散薬を自動で計量・分包するロボットです。これまでは、薬剤師がスパーテル(薬匙)を用い散薬を計量し分包機で調剤していましたが、これからは、秤量から分包まで一度に行えることで薬剤師の業務負担が改善出来ると思います。もう薬剤師の匙加減は必要なくなります。
(匙加減の語源は)江戸時代の漢方医が薬匙を使って色々な薬を調合し、治療にあたっていました。非常に微妙な加減で薬の出来が違ってきます。調剤の技術はとても大切な技術であったことから、薬を調合する加減のことを「匙加減」というようになりました。→諸説あり